闇夜の追っかけ(お題「サンタクロース」)
「どうして私なのだ・・・?」
赤い帽子を握り締めて、ジュリアスは呟いた。
「全員にアンケートをとった結果です。満場一致でしたわ。」
美貌の補佐官は厳かに答えた。
「しかし・・・」
なおも難色を示すジュリアスに向かって、ロザリアは菫色の瞳を上げるときっぱりとした口調で続けた。
「他に誰がいまして?サンタクロースと言えば人々に幸せを与えるクリスマスの責任者ですわ。いい加減な人間に勤まるわけがありません。陛下が用意されたこのプレゼントを無事に全員の屋敷に届ける・・・この大役を他人任せになどできまして?」
有能で鳴らした補佐官には守護聖たちも常に一目置いている。その彼女にきっぱりと言い切られて、さすがのジュリアスもややたじろいだ。
「いや・・・確かに重要な役割ではあるかも知れぬ・・・しかし、・・・・なぜ私が・・・。」
なかなか納得する様子を見せないジュリアスに対して、ロザリアは切り札を繰り出した。
「満場一致と申し上げましたわね。・・・もちろん、その中の一票は”陛下の”ものですわ。」
「陛下の・・・」
ジュリアスの表情がにわかに引き締まった。陛下の意思・・・となれば、これは単なるお遊びではない。立派な”任務”ということになる。
「陛下はあなたを信頼されているのです。それを裏切れまして・・・?」
更に念を押すロザリアに向かって、ジュリアスは射抜くような視線で切り替えした。
「・・・なぜそれを先に言わぬ!」
「この帽子をかぶればよいのだな。ふむ・・・これが装束か。プレゼントのリストは用意されているな。安心するが良い。必ず今宵のうちに届けて見せよう。」
さすがに首座の守護聖である。決断すればその意志は固く、仕事は速い。
「くれぐれも、本人達には気づかれないように、ですわよ・・・。」
「当然だ。そのような愚かな醜態を私が晒すとでも思うか・・・?」
最後は決然と胸をそらすと、ジュリアスは紅い装束とプレゼントの詰まった巨大な袋を手に、大股に飛び出して行った。
「あはははは・・・あっは・・あは、あはっ・・・くっ・・・苦しい・・・ロザリア、サイコー!」
入れ違いに、奥の部屋から転げ込むように金髪の少女が飛び込んできた。
「陛下・・・本当にお人が悪い・・・。」
あきれたように言われても、アンジェリークの笑いはまだ止まりそうになかった。
「何よぉ、ロザリアだって楽しんでたくせにぃ〜。」
「わっ・・・ワタクシは別に・・・。」
「さっ、私たちも出かけるわよ!」
やっと笑いを収めたアンジェリークは、さっと立ち上がると、ドアノブに手をかけた。
「出かけるって・・・まさか・・・。」
「そうよー、ジュリアス様のサンタクロースよvv!こんなすごいもの見逃せるもんですかっ!カメラ持って!ビデオがいいかしら!とにかく行くわよー!」
きゃー、と雄たけびをあげながら女王陛下はドアを飛び出した。
遅れじと続いた美貌の補佐官も、何だかんだ言いながらけっこうノリノリである。
かくして、その晩、紅い装束につけひげをつけて、あちこちで煙突をくぐりまくった首座の守護聖の姿は余すところなくビデオに納められ、女王陛下の秘密の宴会の肴となったのであった・・・。
・・・・・ジュリアス様、ごめんなさい(笑)!
-Fin-
2003年12月14日(日)
■管理人より〜
えー。アホな話ですみません! 裏話ですが、この陛下と補佐官の二人は、実はどちらも「ジュリアス様・ファンクラブvv」の熱烈な会員なのです(←ホントか・・・?/笑)・・・ということでっ!
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