もみの木のてっぺんで(お題「もみの木」)




マルセルはもみの木を飾っていた。
彼の私邸の程近く、通りに面した一角にもみの木が植えられている。
マルセルは1年間この木の手入れをして、毎年この時期になるといろんな飾り物や電飾でもみの木を飾る。
ここ数年はそれが名所と言うか、格好なデート・スポットにもなっていた。

「よくやんな・・・自分の庭でもねーのによ」
せっせと枝に飾りをくくりつけているマルセルの背中に、ゼフェルが呆れたように呟いた。
「おはよう、ゼフェル!手伝いに来てくれたの?」
脚立の上から菫色の瞳が微笑む。

「あほらしー、やるかよ!」
ゼフェルはチッと舌打ちで答えた。
「大体よ、ココに来る連中、飾ってるのがおめーだって知らねーんだろ?誰かが1年間苦労ーしてメンドー見てんのも知らねーくせに、この時期になるとすっかり当てにしやがって・・・・おめーやってて馬鹿らしいと思わねー?」
「・・・別に」
マルセルは飾り付けの手を止めずに、楽しそうに答えた。
「いいんだよ、そんなの・・・。みんなが楽しそうにしてれば・・・。それ見てるだけで楽しいもん。」

「・・・・・・ふん、あほくせ・・・。」
緑の守護聖の小さな背中を見つめていたかと思うと、鋼の守護聖はふいにくるりと背中を向けてその場を走り去っていった。
「ヘンなの。ゼフェル・・・。何を怒ってるんだろう?」
まぁ、いつものことだけどね・・・と呟きながら、マルセルはせっせと飾り付けを続けていた。


クリスマス当日・・・・

自分の飾ったツリーの周囲に人だかりが出来ているのを、マルセルは少し離れたところで満足そうに眺めていた。電飾が照らし出す幸せそうな家族、恋人達・・・・。家路に向かう途中で、ほっと足を止めて見上げる人々・・・。

自分がまだ小さかった頃のクリスマスを思い出して、ほんの少し切ない気分になる・・・。

「・・・・あれ?」

マルセルは、ふと妙なものに気がついて目をこすった。

ツリーのてっぺんには金色の大きな星を飾ったはずなのに、それがなくなっている。

替わりに木のてっぺんには、金髪に菫色の目をした天使の人形が飾られていた。
片手にスコップを握り締めて、嬉しそうに笑ってる。
それがツリーのてっぺんでくるくると回りながらクリスマスソングを奏でていた。


「・・・・素直じゃないんだから・・・。」

思わず吹きだしそうになりながら・・・だけど嬉しくて、ちょっぴり涙も出てきた。


「Merry Chrismas!・・・・有り難う!」

マルセルは、ツリーと、それを見つめる人々と
その人々を見つめている自分の人形を見て、そっと呟いた。



-Fin-
2003年12月14日(日)


■管理人より〜
自分のタイトルに自分で書いちゃいました。
年少組だけって初めてだなー・・・。 来年はいっぱいマルさま書きたいです!
ではでは書き逃げ!

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