やけどしたって・・・・知らないからっ!!
(-画・ナッキーさん-)
好き好き!My Darling!
まったくっ!クリスマス・イヴの夜だって言うのに!
イスに足を組んで、私はちょっぴりいらいらと一向に姿を表さない恋人を待っていた。
某大手研究機関の研究員を勤めている私の恋人は、真面目一本槍な仕事人間。
残業、休日出勤は当たり前で、デートの遅刻、ドタキャンは日常茶飯事だった。
日頃の私はあまりワガママは言わない。
彼が何を言っても天使の笑顔で許してあげちゃう。
だって、あの人のそういう真面目なところが大好きだし、支えてあげたいと思ってるから。
・・・・・だけどねっ!
クリスマスとか、私の誕生日とか、そんなの1年に1回しかないんだから そういうときくらい、私を優先してくれてもいいと思わない?
「ルヴァったらぁ・・・・・!」
私は思わず、ジン・フィズをオカワリした。
黒いドレスを着てきたのよ。
むちゃくちゃセクシーなヤツよ。
もちろん、あなたのためよ。
つきあって1年以上経つのに未だに私たちはキス止まり。
(それも、高校生みたいな 「ちゅっ」、よ!信じられる?)
私を誘おうともしないあなたのために、ちょっぴり背中を押してあげようとしてるのに・・・・。
「すみません。前の工程でミスがでちゃって、急に応援に回らなきゃならなくなったんです。多分、後、1時間くらいで終わると思いますから・・・・。」
彼から電話があったのが約2時間前。
状況は目に見えるようだった。
多分同僚の誰かがシクって、そのツケが彼に回ってきてるんだ。
応援って言いながら、本当は一人でポツンと研究室に残ってたりするんだ。
頼まれると「いや」って言えないんだから、あの人は・・・・。
「バカなんだから・・・・・」
私は再びジン・フィズをオカワリした。
だいたい私のこと心配じゃないの?
こんな盛り場に一人で置いておいて?
私のこと本当に天使だとでも思ってるの?
あなた次第でいくらでもアクマになっちゃうんだからっ!
私は立ち上がると、シガレットの自販機の前に立った。
銘柄は良く分からない・・・・ので、1番スマートで女性的なケースのを買う。
(少しはシンパイしなさい・・・・・。)
心の中に恋人の当惑顔を思い浮かべて、タバコを1本くわえたその瞬間、隣からにゅっと手が伸びてきた。
「・・・・どうぞ」
ライターをつけてくれたのは、背の高い金髪のハンサムさんだった。
「・・・・・ありがと」
お礼を言って、タバコに火をつけた。
タバコを吸ったのは数年ぶり・・・・・というか、高校1年の時友達の部屋で一緒に「ナメられないタバコの吸い方」を特訓したのだ。
けっこうカッコよく吸えるようになったけど、結局お小遣いがつづかなくてあっという間にタバコは止めた。
一息吸い込むなり、いきなりむせ返りそうになるのをぐっとこらえる。
久しぶりだからよ・・・・。すぐに慣れるんだから・・・・。
足を組んでゆっくりとタバコをふかしていると、さっきの金髪君が寄って来た。
「ひとり・・・?一緒に飲まない・・・・?」
ほら見なさい・・・・あなたが早く来ないからよ。・・・・・どうなったって知らないからね。
「ひとりなわけないでしょ?待ち合わせよ。」
「来ないじゃん、さっきから、彼氏。そんなヤツ放っておけば?俺と飲もうよ。」
・・・・コイツの言うとおりだわ。あんなヤツ放っておけばいいんだわ。でも・・・・
「うるさいわね。これから来るのよ・・・・・」
立ち上がりかけたその時に・・・・。
「アンジェリーク!」
戸口の付近に、ようやく待ち人が現われた。
「ルヴァ!・・こっち!」
私が手を振って応えたのを見て、金髪クンは残り惜しげに離れていった。
「すみません、遅くなって・・・・・・」
やや慌てた風に歩み寄ってきた恋人は、去ってゆく金髪クンを見て
「お知り合いですか?」
と、間抜けなひとことを吐いた。
「そんなわけないでしょっ」
言いながら私はゆっくりとルヴァの前で超ミニの足を組み替えた。
そんな私の姿を見て、ルヴァはちょっと首を傾げて言った。
「おや、今日はまた・・・・・。」
それだけか?・・・・私はちょっとプツンときかかった。
私はルヴァの前で悠然とタバコを取り上げると、バーテンさんに火を借りてルヴァの前でゆっくりとくゆらせ始めた。
「・・・・・・・・・・」
ルヴァはびっくりしたような顔でしばらく見ていたかと思うと、やおら「くすっ」と声に出して笑った。
『くすっ』、だとっ!!! ・・・・これもカチンときた。
「・・・・何ですか?」
私はルヴァを睨みつけた。
「子供にはあぶないですよ。」
ニコニコしながらルヴァが言う。
「子供じゃないもん。」
私は更にふてくされる。
「だって、あなた、ふかしてるだけで、全然吸ってないじゃないですかー。」
ルヴァはおかしそうに笑ったかと思うと、すうーっと、流れるような動作で私の口元からタバコをつまみあげた。
そして、そのまま、妙に慣れた仕草で、すっと自分の口にくわえてしまった。
ルヴァは笑って私を見下ろしたまま、ゆっくりとタバコの煙を吐き出すと、いきなり立ち上がってひったくるように私の手をとった。
「じゃ、行きますよ。」
そう言って、咥えタバコのまま、さっさと私の肩にコートを着せ掛ける。
「えっ?どこへ・・・?」
「クリスマスでしょ?食事に行きましょう。さっき静かなところを予約しときましたから。」
「ねぇ、タバコ返して!」
「おとなになったらね」
「そんなこと言うなら、コートの中で私の脚なでるのやめてください!」
私は、さっきから私のコートの中でうごめき始めたルヴァの手を、おもいきり抓りあげた。
「あっ、ばれました?」
ルヴァは笑って白々しいことを言った。
・・・・この人のボケは天然かと思ってたけど、けっこう確信犯なのかも知れない。
駐車場で止めてある車に乗り込むと、ルヴァは行く先も告げずに、さっさと車を出した。
ライトアップされた町並みを車で走りぬけながら、ルヴァが急に口を開いた。
「本当にオトナなんですか?」
「あったりまえじゃないっ!」
「じゃあ・・・・証拠をみせてください。」
「えっ?」
「食事するホテルに部屋とってますから。・・・・一人で泊まるなんて、淋しいと思ってたんです。」
・・・・・またそんな白々しいことを・・・・・。
一人で泊まるつもりなんか、無かったくせに・・・・・。
ルヴァの片手運転を注意しようかとも思ったけど、私は相変わらずわたしの太ももの辺を徘徊しているルヴァの手のひらを、しばらく放置することにした。
どうやら、クリスマスの夜に勝負をかけようと思っていたのは私ひとりじゃなかったらしい。
さっきのタバコの吸いっぷりといい・・・・・、
この人が私を「天使」と思っているのと同じくらい
私がこの人を「聖人君子」と思っていたのも
お互い、誤解があったかも知れない・・・。
まぁ、いっか。
私は黙って、ことっとルヴァにもたれかかった。
だって、とにかく、大好きだもの!
とにかく、 これで今夜は二人きり!
Merry Christmas!
大好き!My Darling!!
=完・おそまつ!=
へぼ文・ロンアル
テーマはアメコミっぽい、ポップでスタイリッシュなリモージュ嬢だったんです が、描いてるうちにいつのまにかお水のお姉さん系リモージュに・・・(泣)
画材は手間のかからないコピックです。
こんな場違いなイラストをクリスマス企画に出しても らっていいんだろうか・・・と思っていたら、 な、なんとロンアルさんからロマン ティックかつステキな創作をつけて頂いちゃいました〜!感動ですv
とにかく、メリー・クリスマス!
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