雪 花 夜



貴女が、私の前から消えたあの日から・・ずっと消えない雪が心の中に降り続いていました。
何者をも拒む冷たい雪が・・
けれど・・凍えかじかんだ想いを貴女が溶かしてくれた時、
雪の冷たさの意味を私は、初めて知りました。
それは・・抱き締めた貴女の温もりをより強く、感じるためだったのだ。と・・

こんなふうに深々と冷たさの降り積る夜は、ふと・・思い出してしまいますね。
あの・・苦しかった日々・・
私から貴女を奪う宇宙(そら)を恨み。
私の前から何も云わず消えた貴女を恨んだ。
己の弱さ故に・・貴女を思い遣る事さえせずに・・
儚く消えた恋に哀しみ・・自分から何一つ変えようとしなかった。
貴女の声を再び耳にするまでは・・

悔やんでいただけの日々を
ちっぽけな四角い箱から流れてきた貴女の変わらぬ声は、あっという間に砕いてしまった。
あの瞬間。 絶望の暗闇に灯った小さな明かりを、烈しい悦びを・・
私は一生忘れないでしょう。

そして・・・
貴女は・・まるで何でも無い事のようにグイグイと幸福を私の元に運び込んで来てくれた。
この幸せが、幸せだと思えるのも・・貴女が私の傍らにいてくれるからなのです。

ああ・・雪が降ってきましたね・・
窓越しに白くサラサラと舞い落ちる粉雪を見やって・・
隣に眠るいとおしい天使にそっと毛布をかけ直した。

「アンジェ・・貴女が、私にもたらしてくれた幸せより、1g多く・・貴女に幸せが訪れますように・・メリークリスマス・・お休みなさい・・」

カチリ・・眠りに就くためにランプシェードの紐を引くと・・青い闇に雪明りがほんのりと部屋に射してきた。



雪 花 夜 2



ねぇ、ルヴァ ・・・本当は私も眠れないの
あんまり、幸せだから

さっきまで思い出していたの
あなたと離れていたあの凍えるような日々

とても寂しくて
あなたに会いたくて・・・とにかく会いたくて
何もかも投げ捨てて、逃げ出してしまいたいと
何度もそう思った

だけど分かってた
本当に苦しかったのはあなたの方だったよね
冷たい雨も激しい風も、私のところまでは届かなかった
ずっと、あなたが守ってくれたから


スタジオの四角い窓越しにあなたを見つけたとき
奇跡が起きたと思ったの
あなたがこうして私の隣にいることが
今でもまるで夢みてるみたい


ねぇ、ルヴァ。・・・雪が降ってきたみたいね。

雪って寒くて冷たいものだと思っていたけど
そうじゃないのね
雪が冷たいのはあなたの温もりが良く分かるように
そのためだったのね

あなたの腕が私にそっと伸びてきた
まるで小さな子供にしてくれるみたいに
そっと毛布を直してくれるあなた

その腕があんまり温かかったから
私はまた少し泣きそうになった
だって、あんまり幸せだから
まるで夢見てるみたいに幸せだから

「アンジェ・・貴女が、私にもたらしてくれた幸せより、1g多く・・貴女に幸せが訪れますように・・メリークリスマス・・お休みなさい・・」

あなたの声が耳元でささやく

あなたの腕が伸びて、枕もとのスタンドが消えた

メリー・クリスマス・・・ルヴァ
あなたがいるだけで、 私は、幸せ

あなたの腕の確かなぬくもりに守られて眠る夜
窓の外の雪は、少しも冷たくなくて

ただ、とても、優しかった・・・・・。



 




2002年クリスマス企画の際に「まちこです。」さんからいただいたSSです!!
なんとなんと、うちの「イヴの奇跡」を見て、作ってくださったんだそうですー!
つられて私もアンジェサイドを書かせていただきました!
まちこさんとの初!!合作です〜!!

まちこさんは「カレカノ」関係のSSも書いていらっしゃるんですよー
切なく物狂おしいストーリーがいつも素敵!です!



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