幻櫻夜
〜たはむれに 手折らば手折れ ぬばたまに 浮く爪月の 身ではあらねど〜


悪戯の振りをして・・いっそ・・・手折ってしまおうか?
咲いたばかりの桜のような・・
無垢で無防備な・・貴女を

もし、冗談に包んで「欲しい」と言ったなら
一体・・貴女はどんな顔をするのだろうか?

そんなにも近くで誰にでも触れられるほどの近さで・・・

甘い香を漂わせる花のように、
微笑を・・光を振り撒かないで欲しいと願うのは・・、私だけなのだろうか?

――櫻を折ってはいけない。
そんなことは・・自分が一番よく認識し(しっ)ているというのに――


暗闇に淡く浮かび上がる貴女が、
私をこんなにも翻弄しているという事を・・・欠片も貴女は気付かない。

誰のことをも計らずとも魅了せずには居られないというのなら・・・

せめて・・・、今宵かかる細い月のように
誰の手にも落ちないで欲しい。
願ってしまうのは・・、
きっと、傲慢な私の我侭なのだろう。


それでも・・・求めずには居られない。

貴女を・・
貴女だけを。




「いっそのこと、このまま私のものにならないかね?」
「もう、友雅さんったらまた冗談ばっかり!」

不意に現れた、異世界からの少女。
時に訳の分からない言葉をつかい、身分の階級も無く人と接するその姿に
月明かりだけが頼りのはずの夜を、暗いと言って怖がる姿に・・・。
日の光の元誰にでも向けられる微笑みは、純粋で、

そう、それだけのはず。
今まで知り合ってきた女達とは全く違うその行動に、
自分は物珍しさを感じただけ。

「おやおや・・。私は本気のつもりなのだが・・ね。」
「そうやって、何人の女性に声を掛けてきたんですか!」

真っ直ぐで、清らかなその心。
見る者を引きつけて放さないその姿はまるで・・・。

長い凍える冬の終わりを告げるかのように
一瞬の美しさと儚さで、人々に愛でられる桜の花。
側で愛でたいと思っても・・。遠くから眺めるしか出来ない・・・。
桜のような人。

無理に手折ってしまったら・・。
貴女もまた。消えてしまうのだろうか?
桜の花と・・・。同じように・・・・。

それでも・・・・。

「残念ながら・・・・・。」
「・・・・?」
「いや、なんでもないよ。姫君・・・・。そろそろ戻ろうか。明日の朝、藤姫に怒られたくはないからね・・・。」

細くかかる三日月の心許ない光の中で、
ふわふわ揺れる5分咲きの桜。
2.3日もすれば満開の花を咲かせるであろうその花を
どうして手折ることなど出来ようか。


届かぬ存在だからこそ、
誰の手にも、落ちることが出来ないからこそ・・・。
桜の花は 儚くも美しい・・・。

そう、届かぬと解っているから。
いつかは月へ帰る異世界の少女。
手折ることが不可能だと解っているからこそ
余計に、貴女が欲しくなる・・・。
それだけのこと・・。


問いかけた視線の先
見上げた空の上の細い細い三日月が、答えを隠すように
雲の合間に姿を消した。


 


■月読紫苑さまから
桜企画のチャット中に、頂いた友様創作(短歌)を元にしたコラボレーション作品ですv
タイトル、短歌、前半部分がまちこです。様の作品
後半がわたくし・・となっております・・。
いや〜リクエストで友様って始めたなので非常に緊張しております・・。
しかも、今回どうしても!
壁紙をセンターに入れたくて・・。しかも直線的ではなく曲線的なイメージで・・。
ちょっとその辺りはこだわりました・・。(こだわる場所が間違ってるような・・。)
イメージに叶っていれば幸いでございますv5040番を踏んで頂いたまちこです。さまへ
”愛をこめて・・。”
 


■管理人(ロンアル)から
うああ・・・ごめんなさい。センターの曲線壁紙を探しまくったのですが、
今回同じテイストのものが見つかりませんでしたー(号泣!)
引き続き探索いたしますが、それまで「黄色月亮バージョン」の壁紙をお楽しみください!

ごめんなさい、紫苑さん!



【月読紫苑様TOPへ】