7.謹慎

Angelique


「ジュリアス様」
広間を出てすぐに、私は執務室に戻ろうとするジュリアス様を捕まえた。 やっぱり黙ってなんかいられない。
「あの、・・・ジュリアス様」
息せき切って走ってきたのだが呼吸を整える余裕はない。
「さっきの・・・さっきのルヴァ様の・・話・・・あれは・・」
「分かっている」
はじかれるように返事が返ってきた。
「ウソなのだな?」
「そう・・・そうなんです。私が行きたいって言ったんです。ルヴァ様は止めたんです。でも私が無理やり・・・それでルヴァ様は心配してついて来てくださったんです」
必死でひざまずいて光の守護聖のすそに取りすがった。
「お願いします。ルヴァ様を助けてください。謹慎なら私が・・・」

光の守護聖は、優しく私を助け起こした。
「それは無理だ」 返事はにべもないが、意外にもその声にはいたわるような優しさがあった。
「でも」
「ルヴァだから謹慎で済んだのだ。お前なら・・・失格だ。」
「・・・・・・・・」
「ルヴァがいったであろう。エリューションのためにがんばれと。良いのか、ここで強制送還されても。」
「・・・・・・・・」
「みんな分かっている。分かっていて黙っていたのは、お前に頑張って欲しいと思っているのだ。ルヴァの気持を無にするな」
私は返事ができなかった・・・どうしよう。でも、ジュリアス様の言うとおりだ。
「心配するな。他の守護聖ならまだしもルヴァなら2週間の謹慎くらいどうということもあるまい。ヤツにはいい骨休めになるのではないか」
最後はこの人には珍しく冗談めかしていった。
「でも、2週間本も読めないなんて・・・。」胸が詰まった。

「どうもお前はルヴァという男を過小評価しているようだな。心配入らぬといったら心配要らぬ。あれは砂漠のラクダのように忍耐強いやつなのだ。1、2年閉じ込めたところでルヴァなら大丈夫だ。心配することはない。」とても誉めているとは思えないような誉め言葉を口にした後、「そんなことで悩むヒマがあったら育成するのがお前の勤めだ」といつもの調子でお小言を頂戴した。
それでもジュリアス様は半日つぶして今日の力はもう残っていない私に「今日の分の育成は私が力を送っておくから」と、怒ったように約束してくれた。

とにかくみんなが私のために黙ってくれているということが分かった以上。育成するしかない。それしか応える方法はない。2週間でルヴァ様が戻ってくる前に、大陸を元通りに---ううん。もっと幸せな大地にするんだ。私は決心を固めた。



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