全身のひどい不快感と高熱に似た感覚に悩まされながら、私はベッドの中でのた打ち回わるようにして1週間を過ごした。 聖地で押さえていた分が一気に出た感じだった。
1週間がたち、どうにかベッドから立ち上がろうとした私は、すぐに床に転がった。
立てない。なんとしても立てなかった。
右足に力が入らない。右手もしっかり握ることができず、かすかに指先が震えていた。
私はもはや自分の足で立つことすら出来なくなっていた。
その後もこの症状が改善されなかったので、私は仕方なく歩くときは杖を使うことにした。
右手で字がかけなくなってしまったので、なんとか練習して左手で小学生レベルだがとりあえず字もかけるようにした。
こうして私はどうにか主星での生活を始めた。
数時間出歩くと疲れて息切れがしてくるので、自然と私は部屋にこもるようになった。
部屋でラジオを聞くことが、私の唯一の楽しみになった。
放送局の住所は調べてあった。訪ねていこうと思えばいつでも行ける。番組の投稿アドレスにメールすれば確実に彼女が読むということも分かっていた。だけど私はそのどちらも実行していなかった。
今の自分のこんな情けない姿を彼女には見られたくなかった。 会いに行くならせめてもう少し健康を取り戻してからにしたかった。しかし、実際問題、治るのだろうか?その不安もあった。
時々動悸が激しいときなど、このまま死ぬんじゃないか、と縁起でもないことを考えたこともある。
医者にはまだ行っていなかった。
今度はジュリアスとは関係ない。怖かったのだ。治らないと言われるのが。
それは私にとって死刑と同じことだった。
彼女と会えないのだったら、それは死ぬのと同じだった。
そんなある日、いつもどおり定刻にラジオのタイマーが入ると、アンジェリークの暖かな声が飛び込んできた。
『みなさん、こんにちは。リモージュのトワイライト・リクエスト、今日も聞いてくれて有難う!!
さて、今日はまず最初にお知らせです。ジャジャーン! 来週のこの時間はサニー・ストリートの公開スタジオで、公開放送を行なうこととなりましたー!』
『うーん。僕は実はこの企画を心待ちにしてたんですよ。』
『えーっ、そうなんですか?』
『だって、リスナーのみなさんは知らないだろうけど、リモージュさんってねー実はすごいビジンなんだよー。ほんと、ラジオにしとくのもったいないくらい!』
『やだ、何言ってんですか!困りますよ!これで来週来た人たちみんな帰っちゃったらウィルさんのせいですからねー!!』
公開放送・・・・・これは願っても無いチャンスだった。
彼女の姿が見られて、こちらは見られずに済むわけだ。
女王になる前夜の、あの雨の日依頼、彼女の姿を見ていない・・・・・・やっぱりどうしても一目でもアンジェリークに会いたかった。
その日私は、時間をかけて、繁華街の中のそのスタジオまでたどりついた。