私の気持ち、あなたの願い
〜Luva〜
聖殿の裏庭を歩いていて、誰かの落としたノートを拾った。
何の変哲もない1冊のノート
持ち主に返そうと、私はノートのページを開いた。
細かくびっしりと書き込まれた几帳面な文字
―― ああ・・・彼女の・・・
私にはすぐわかった。 それはアンジェリークの字だった。
持ち主が分かったのだから、それ以上中を見たりしてはいけない。
ノートを閉じようとした私の目に、あるものが飛び込んできた。
私の視線は、そこに書かれた言葉に釘付けになってしまった。
―――あなたが好き。 苦しいくらい。
どうしたらいいのか、もう分からない。
息が止まりそうだった。
心臓の鼓動が苦しいくらい速くなる。
文字の端のインクが波紋のように丸く滲んでいた。
これは、涙の後なのだろうか・・・・?
私はノートを閉じた後も、しばらく動けずにその場に立ち尽くしてしまった。
彼女が誰を愛しているのか 私には分からない
彼女が私には話すのは、いつも育成に関することばかりだったから・・・・。
そしてそれは当然といえば至極当然で、
だってあなたは女王候補で、私は守護聖なのだから・・・・・・。
私は再び立ち止まり・・・・・
そしてまた一つ、ため息をついた。
―――うそつきだ・・・・私は。
あなたをただの女王候補だなんて 、
とっくにもうそんな目で見られなくなっているくせに。
あなたが誰かと肩を並べて歩いているのを見かけるだけで
どうしようもないくらい、狂おしい気持ちになるくせに・・・・。
ずいぶん回り道をして、やっとあなたの寮の前までたどり着いた。
面と向かって渡すなんて、できそうになかった。
何も気が付かなかった振りをするなんて、私にはできない。
私は黙ってノートをポストに入れた。
あなたへの想いも、こんな風に簡単に手放してしまえるものなら楽なのに・・・・・。
私は黙って、今来た道へとつま先を向けた。
・・・・多分
やっぱり私は、この思いを一生口にすることは無いんだろう。
そしていつかあなたが誰かと幸せに肩を並べて歩く日がきても、
こうして少し離れたところから、
あなたの幸せを願うくらいのことしかできないのだろう・・・・。
私にできることは、この位置で、ただ、あなたを精一杯支えることだけ。
アンジェリーク。
私は一度だけ、あなたの窓を振り返った。
あなたは何も知らなくていい。
私はあなたの幸せだけを願っているから。
私は、
こんな風にあなたを愛することしか
それしか、できないから。
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