里帰り (1) 発端はある昼下がり、陛下とお茶を飲んで休憩していた時のことだった。 「来月は珍しく行事が少ないわねえ・・・・。」予定表をめくりながら陛下がつぶやいた。 私はすかさず言った。 「ちょうどいい機会ですし、陛下も少しはゆっくりお休みされたらどうですか?」 実はこのスケジュールは私が仕組んだことだった。 だって陛下は就任以来ちっとも休みを取っていないんだもの。 なんだかんだと人使いが粗いけれども、陛下はちゃんと回りのことは考えていて、守護聖様方の仕事が偏らないように、過重になりすぎないようにと、いつも気にしていた。だけど自分のこととなると、陛下だけはずーっと休みを取っていないのだ。 「・・・・そうね。私もたまにはゆっくりさせてもらおうかしら。」 意外とすんなり陛下が乗ってきたので、私はここぞとばかりに言った。 「じゃあ、いっそご旅行でも・・・」 「そこまですることないわよ。聖地を出るとなると大事になっちゃうし・・・ここで充分よ。そうねえ、せっかくだからこのへんで、みんなと意思疎通を図っておく必要があるかもね・・・・。」 「みんなって・・・守護聖様方ですかぁ?」 「そうよ。彼らとのコミュニケーションだって大切でしょう?とりあえずジュリアスと遠乗りに行って、オスカーとはビリヤード、ランディとはテニスでもして、リュミエールには美術館を案内してもらいましょう。オリヴィエとショッピングに行って、マルセルの花壇を見せてもらって、ゼフェルには最近の発明品を見せてもらうわ。クラヴィスは・・・そうねプラネタリウムにでも誘ってみようかしら・・・・・。」 「そ・・・そんなに忙しくしちゃったら、お休みできないじゃないですかあ?」 「あら、楽しそうじゃなくて?・・・・でも、手配は全部あなたがやっといてね。」 私はそこではたと気が付いた。陛下ったら誰か忘れてやしませんか? 「陛下・・・・ルヴァは・・・・ルヴァはいいんですか?」 「ルヴァ・・・?ルヴァは別にいいわ。」 「いいわって・・・だって陛下・・・」 「だって図書館に行くのに別に案内なんかいらないし、釣りも趣味じゃないしね。・・・・・あんたたちこそどっか行って来たら?」 「へっ?私達が・・・ですか?」急に風向きが回ってきて私は慌てた。 「そういえばあんた達新婚旅行もまだじゃなかった?こんないいタイミングなかなかあるもんじゃないし、ふたりでどっか行けばいいじゃない。」 「ええっ・・・でも・・・・」 「どっちでもいいけど、今行かないとあんた一生新婚旅行なんて行けないかもよ」 「・・・・・・・・・・・・」 「ルヴァと良く相談しなさい」という陛下の言葉を背に、私は退出した。 二人で旅行・・・・・あまりの忙しさに考えたこともなかった。あまりにも突然な話に私は喜ぶよりも先に呆然としてしまった。どうしよう・・・どこに行こう・・・・というか、ルヴァは何て言うだろうか・・・・・。 |