日曜日の恋人 (1)


週に1回、日の曜日に聖地に来て店を開ける・・・・それは最近始まった俺の新しい仕事やった。

聖地からこの話が持ちかけられたとき、始め、俺は断るつもりやった。
聖地の偉いさん達相手に高額の稀少品を商う・・・そりゃ商売としては割がええかも知れんけど、どうも俺の性分に合わん。 お上と癒着してるみたいに思われるのも面倒やったし、俺はやっぱり消費者向けの、もっとエキサイティングな市場で勝負したいと思っとった。

ところが、フタを開けてみると、俺はあっさりその話しを受けた。
しかも、気が付いたときには「その店、俺が自分でやらせてもらいます!」と啖呵まできっとった。
理由はカンタン。 「めっちゃ面白そうやんか!!」というきわめて感情的な理由からやった。

金髪の女王補佐官さんは、まるで女子高生みたいな可愛らしーいお人で、俺を見るなりにこーっと笑ってこう言った。
「あのね!聖地にウォンさんのお店を出して欲しいんです。」
俺はもともと受けるつもりなかったんで、当り障り無く断る理由を探していた。
「店を?ふーん。で、どないな店出したらええんですか?珍しいものが手に入る店?それともスーパーマーケットみたいな何でもある店ですか?」
「ううん。そうじゃなくて!」
金髪の補佐官さんはぶんぶんと首を横に振ると、また嬉しそうな顔になってこう言ったんや。
「ウォンさんの売りたいものだけ集めたお店!」

「俺の・・・・売りたいもん?」

長いこと商売やってて、こんなリクエストは初めてやった。思わず目がテンになった。
「そうそう・・・・あのね。日用品だったら聖地にも売ってるところはあるし大体のものは手に入るでしょ?だから、もっと夢のあるもの・・・・夢を売ってるところが欲しいの。 アタシもやったことがあるから分かるけど、女王候補って結構ストレスたまるんですよ。いつも誰にでもいい子でいなくちゃいけなくて・・・でも、中身はやっぱり普通の女の子でしょ?そういうところも大事にしないと、無理ばっかりして自分の幸せなくしちゃったら宇宙を幸せになんか出来ないじゃないですかー?だから、彼女達が思いっきり幸せになれるような場所が欲しいんです。 それに、 もちろん女王候補だけじゃないんですよ。ウォン社長が聖地に夢いっぱいのお店をだしたら、聖地でお店をやってる人たちもシゲキを受けると思うんですよ。『物を売るだけじゃなくて、幸せを売るんだ!』って気持ちになってくれたらいいなって!」

やや舌足らずな早口で、補佐官さんは一気に言ってのけた。
所詮、こういう契約は最後は人で決まるんや。 その点、この補佐官さんのキャラクターは俺のツボにぐっと来た。「将来、宇宙を担う女王さんになる候補達に夢を売る仕事・・・」このフレーズも俺の心の琴線にビシビシ触れていた。
俺は即決した。これはまさしくウォン・コーポレーションの仕事や!少なくともそんじょそこいらの「モノ」しか売れんようなチンケな会社に任すわけにはいかん。

「分かりました。」
俺はひとつぐぐっと身を乗り出した。「だけど、・・・・条件出してもええですか?」
「もちろんよ!」補佐官さんも負けずにぐぐっと身を乗り出した。
「俺も引き受けるからには、どこにでもあるようなフツーの店出す気はありません。」
「ステキ!」
「どんな店出すかも含めて、店の運営や品揃えに関して聖殿は一切口出ししないこと。俺のやりたいようにやらせてもらいます。」
「もちろんよ!ガンガンやって頂戴!」
「それと、この店は俺が自分で仕切らしてもらいます。だから、俺の身分はモチロン、店がウォン・コーポレーションの系列であることもナイショにしとって欲しいんです。」
「すごい!ワクワクしますね!」
「この条件、呑んでもらえますか?」
「分かりました!全部おやすいことよ!じゃあ、やっていただけるんですね!」

女王補佐官さんは「やったあ!」と両手を上げて万歳をしはった。
なんや結局、このお人が一番楽しみにしてはるみたいやった。

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