時計仕掛けのI Love You1

Angelique



空に真っ白な月がかかっている。
肌寒い夜。月明かりの中。私は滝のふもとに跪いてひとり祈っていた。

あいたい。あいたい。・・・・・あいたい。
どうしてもあの人に。今日のうちに。

私がまだ私でいるうちに・・・・・。
もうすぐあえなくなるその前に・・・・・。


夜になってから聖殿に呼ばれた。
「おめでとう、アンジェリーク。あなたが新宇宙の女王に選ばれました。」
女王陛下と補佐官様にそう告げられた。

分かっていたはずだった。
そのために私はここに来た。

だけど・・・だけど・・・・。

この時になって、私は揺れていた。

まだ形も定まらない、何もない宇宙。
あさってにはそこに行って、僅かな人数で、新しい宇宙をゼロから創って行かなきゃならない 。

できるんだろうか?私に、そんなこと?
天才少女と言われたレイチェルに比べて、いったい私のどこが優れてるっていうんだろう?
私が失敗したら、新しい宇宙は、そこで生きる生命はどうなってしまうんだろう?

それよりも何よりも

もうあえない・・・二度とあえなくなってしまう。
あの人と・・・・。



この試験、仮に私が合格だったとしたら、それは私の力じゃなくて、全部あの人の力だった。

すぐにくじけそうになる私を、あの人が励ましてくれた。
心から私を叱ってくれた。
いつも揺ぎ無く前を向いて、明日や夢を私に信じさせてくれた。


このまま女王になっていいんだろうか?
まだ後戻りできるのかもしれない。

私が欲しいものは
私がいたい場所は・・・・・




「オリヴィエ様・・・・・」




震える声でささやいたその名前に
背後のカサリと落ち葉を踏みしだく音が重なった。


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