<名残櫻〜ナゴリザクラ〜>



今も・・忘れられずに・・
胸に焼き付いている。

ハラヽと咲く花にも似て・・
花よりも愛しい微笑。

もしも、叶うのならば・・
そして、赦されるなら・・
私に支払える全てを捧げてでも構わない。

たとえ刹那の瞬間(とき)でいい・・
もう一度、抱き締められるなら。

運命(さだめ)と知らずに出逢い、
運命故に別れて・・
恨んだ日々さえ今では、
朧(おぼろ)に霞むけれど。


どれほど・・祈っていても
たぶん、叶えてあげられそうもない。

ハラヽと舞い散る花の下で、
共に交わした、あの誓いを・・

ただ・・それだけが心残りと
傍らの櫻にそっと・・
そっと、囁くばかり。


誰にも、譲れはしない。
決して、無くならない。


たとえ
幾たびの逝く春を送り
この身を土に還しても、
命を天へ返したとしても・・・

ずっと、愛してる。
そっと、願っている。

たった一つだけ・・・
花を撫でる微風に託せるのなら
届けて欲しい、
私の替わらぬ想いを。



―――愛しい貴女の元へ―――


FIN





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