<双真珠2>


貴女に初めて逢った時から、わたくしの心はふるえました。

貴女はひたむきで、どんなに辛い時にでも挫けず
エリューシオンの為に頑張っていた・・
そんないじらしい貴女が不憫で、放っておけなくて、どんな事でもいいから
貴女の為に何かして差し上げたかった。


始めのうちは、
それが可愛い妹に対するような気持ちだ・・と
考えていたのです。
実際、貴女の愛くるしさや、無邪気さは、妹にぴったりでしたから。
そして・・
その方が、都合が良かったから・・・
守護聖としても。

貴女が微笑めば・・・それだけで、わたくしの心に幸せが湧き出しました。
心の揺れに付ける名も知らぬうちに、その感情はどんどん深くなっていきました。
だから、認めるのを恐れてわたくしは・・
自分で勝手に“親愛”という名を付けていたのです。

今思えば・・無意識のうちに逃げていたのでしょうね。

それでも、心の内に巣食うものの正体が恋だと気付かなくては居られないほどに大きく育った頃、
皮肉にも貴女がどんなに宇宙にとって無くてはならない存在かをもわたくしは、感じ取ってしまいました。


守護聖としての在り方と、貴女への恋慕・・・
まるで、寄せては返す波のようにどちらもが同じ強さでわたくしの心を揺さ振りました。

そして戸惑い迷っている間にも飛ぶように日々は
過ぎ去り・・
ほんの僅かな差で、貴女が・・・玉座に就いた。

そして初めてわたくしが、如何に愚かであったかを思い知らされたのです。


まるで、自分の半身を失うかのような痛みが、
どれだけ貴女を恋い、願い、
欲していたかをわたくしに突きつけました・・
滑稽なほどに・・

貴女の気持ちを確かめぬまま、
わたくしの思いも伝えぬまま・・

わたくしの手元に残ったのは、中途半端に行き場を失った恋と、眩し過ぎる思い出、そして・・深い後悔。



わたくしは、幾日も眠れぬ夜を過ごして繰言ばかりを考えていました。
何故、貴女に伝えなかったのか・・、
せめて確かめる事位は出来なかったのか・・、

自分の弱さが招いた、当然の報いなのだから・・
暗澹と苦しむ日々がこのままずっと、続くのだろうと思って居りました・・
あの夜までは。







<Back>  <Next>




【玄関へ】