〜Blue Blue Eyes〜
1.First Impression
完璧な女王候補・・・
それが飛空都市で最初に出会った時の他の守護聖達の印象だろう。
幼少の頃から、女王となるため教育を受けて育ったと聞いた。それに違わず初めて訪れる飛空都市という場所でも、初めて目にする守護聖や女王補佐官に対しても動じることなく、自分の意見を述べる・・・。
確かに、女王候補としての自覚は十分だったろう・・。
だが、俺にはどうしても気になることがあった・・。
真っ直ぐな蒼い瞳。自らのそして周りからの期待に応えるための意志が宿った深いロイヤルブルー。
その瞳が、僅かに揺れたの瞬間を目にしたときから・・・。守護聖の中でもっとも他人の心の動きに敏感であろうオリヴィエさえも気付かなかったあの瞳。
そう、時期女王候補としてやって来たアンジェリークと初めて視線を合わせた直後だった。

多分あの瞬間から・・・俺は君のことが気になっていたんだろう・・。
ロザリア・デ・カタルヘナ・・・飛空都市にやって来たロイヤルブルーの長い髪と、そして同じ色を両目に頂くもう1人の女王候補。







飛空都市での試験が始まってまだ数週間、女王陛下も守護聖もひいてはそれぞれのサクリアの持つ働きなど何一つ知らなかったアンジェリークは、まずはそこからと・・大陸の様子、望みの数値を分析し、ルヴァの所に通っている。確かに、守護聖の中で、サクリアの効力や育成への影響を十分考慮して、なおかつわかりやすく説明できるのは彼ぐらいの物だが・・・
それに引き替え、もう1人女王候補ロザリアは、その辺の事は既に頭に入っているのだろう。
自分で大陸に望まれているサクリアの量を計算し、順調にそして無駄なく育成を進め、発展の基盤になるであろう状況を毎日作り上げていく・・・。まさに完璧な女王候補だった。
急な執務で聖地に戻っていたオスカーが、聖地から飛空都市へ戻ってきたのは週末を挟んで3日後の月の曜日の午後だった。特に深刻な事態が起きたわけではないが、王立派遣軍の最高指揮官である彼は、これから起こるであろう混乱を考え、たまにこうして急に聖地から呼び出しを受けることがある。今回もそうだった。



飛空都市に用意されている聖殿の執務室へ戻る途中、渡り廊下のように北側が開けた廊下の中央あたり、下にはちょっとした広場が広がるその場所で、・・・オスカーは2回目になる揺れる瞳に出会った。
…何を、見ているんだ?蒼い瞳のお嬢ちゃんは…
揺れる瞳の先には、もう1人の女王候補と、年の近い年少の守護聖達。3人の守護聖達の会話にくるくる変わる表情は、本当にただの17歳の女の子で、女王候補だ守護聖だと言われなければその辺にいる子供達と何も変わらない。
何かが、繋がっていく音がした。・・・気になるその理由が繋がっていこうとする音が・・。
「お嬢ちゃん。今日の育成はもう終わったのか?」
「!オスカー様・・。ごきげんよう。オスカー様の所に行こうと思っていましたの、フェリシアには今炎の力が必要ですので、でも不在の様だったので明日にしようかと思っていたのですが・・ちょうど良かったですわ。育成、お願い致します。」
そういって優雅に頭を下げる。顔を上げれば其処に揺れる思いは何もなく、いつもと同じ意志の強いロイヤルブルーが輝くのみ・・。
「そうか、了解したぜ、お嬢ちゃん。・・・ところで、だ。」
すっと1歩距離を縮めると、視線を合わせてこう告げる。
「時間が有るなら、少しお茶でも飲んでいかないか?・・上手い紅茶を手に入れたんだがな、1人で飲むより、お嬢ちゃんと飲んだ方が紅茶も喜ぶだろう?」
いつもの女性に使うようなちょっと軽い口調で誘いをかけてみる。どうしてこの少女が気になるのか。こうしてみれば解るのではないかと・・そういった思いがあったのもまた事実。
だがそれ以上に、聞いてみたかっただけなのかもしれないのもまた事実。
「ありがとうございます、オスカー様。ですが、わたくしが此処にいるのは女王になるため。折角のお誘いですが、わたくしまだ調べなければいけないことがございますの・・。お誘いはまたの機会。休日にお待ちしておりますわ。」
顔色一つ変えず、そして優雅な動作でその場を立ち去るロイヤルブルー。
その行動に、その1つの信念に・・、僅かな動揺。
…そして解ったんだ・・。揺れる瞳の意味も、そしてお嬢ちゃんを気になる理由も…

 

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