〜栞 With My Forst Love〜

「えーっと。あとはこの一角を整理すればおわりですねぇ。」
部屋に1つしかない窓からやわらかな日差しが届く、穏やかな日の曜日の午後。
ルヴァは、自分の屋敷の書斎で今までために溜め込んでいた書物の整理をしている。といっても書庫の整理をはじめてもう2ヶ月が経とうとしているのだが。
「ほんとに、守護聖になって聖地の時間で10年以上ですか。よくここまで増えたと自分でも感心してしまいますねぇ。」
本棚から何冊か本を取り出し、表紙を見て懐かしんだり、不思議顔になったり。そのたびに手が止まるので一向に先に進まない。
「しかし、今回の事が無かったら、私は聖地を出るまできっと書斎の整理なんてしなかったんでしょうね。」
ふふふ。と楽しそうに笑みを刻んで、ルヴァは1冊また1冊と、大切な思い出を振りかえるように本を仕分けしていった。
ルヴァと女王アンジェリークの結婚式まで、あと1月余り。女王は恋をしてはならないという不文律は今はもう存在しない。
だが、女王が宮殿の外で暮らすのは危険が大きすぎた。それゆえに、結婚後2人はこの地の守護聖の館ではなく、宮殿で共に暮らすことなり、ルヴァは宮殿に持ち込む自分の荷物というより自分の大事な書物の整理に負われているわけである。
「?・・・これは・・・。」
本棚の隅。普段なら絶対に目に留めないような場所に置かれた1冊の本を見つけルヴァは一瞬動きを止めた。それは母性系の辺境にあたる惑星の古い、一冊の歴史書。
ぱらぱらとそのページをめくる。ふとページの隙間から何かがふわりと床に落ちた。何気なく目を向けたルヴァはそれを見つけふっとその場に座りこんだ。
「この栞・・・・。そうですか。これは貴女が置いていったのですね。・・・そう、だったんですか・・・。」



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