15.カイゼル(2)
Luva
ファルクに出会えたのは結局運が良かったのかもしれない。
ベータに行こうとしたのは、軍に入って市民権を得るためだった。
主星で移住民が市民権を得るには二つの方法しかなかった。市民の誰かと結婚するか軍に入るか・・・・・。私はもちろん後者を選んだ。
主星も昔とはだいぶ様子が変わっていた。手当たり次第に人を探すというのはほとんど不可能に近かった。
運なんかに頼るわけにはいかない。手がかりを探すためにはなんとしても住民データにアクセスできる立場が必要だった。軍でバックヤードか参謀部にでももぐりこみ、うまく実績をあげられれば最短1年で市民権を得られる。その後は役所か研究機関か、とにかく可能性のあるところに進んで何とかそこで信頼を得られれば・・・・。まどろっこしくはあったが、これが一番確実な方法に思えた。もちろんその間他にもできる手はすべて打つ。
絶対探し出す。そのためなら何だってやるつもりだった。
そうは言っても、軍から研究機関に進んだとしても、住民情報にアクセスできる状態になるまでには数年かかるだろう。 ルビアが信頼できる人物だとしたら、それよりはずっと手っ取り早く情報が得られるはずだった。
そして、彼らは信頼に値すると私は感じていた。 少なくとも彼らは、オスカーから数系統下の部下なのだ。
アンジェリーク・・・・・ユーリ・・・。
とにかく二人のことが気がかりでならなかった。 ここにたどり着くまでも、毎晩二人の夢を見た。 主星に身寄りも無く、まだ幼いユーリを抱えたアンジェリークは、いったい今、どこで、どうしているのだろう。
そしてユーリは・・・私が仮死状態でいた半年の間にこちらでは5年が経っている。ユーリはもう9つになっているはずなのだ。 居所がわかるなら、今すぐにでも飛んでいって抱きしめてやりたかった。
戦艦の指揮官―――わずか1ヶ月で、果たして自分にそれができるのか?
自信がないなんて迷っている場合ではなかった。無理だろうがなんだろうが、絶対やりおおせてみせる。それがあの二人に続く道だとしたら、一歩も引くつもりはない。
「ヨカナーン。出動命令だ。」
部屋に通されて30分もしないうちに、幾分申し訳なさそうな表情でファルクが迎えに来た。
「分かりました。」
私は即座に立ち上がった。
仕事は早ければ早いほど、多ければ多いほどいいのだ。
今私にできることはルビアの要求に何一つ背かずに「すべて」応えてみせること。そして、要求以上のことをやり遂げてみせること。そうしておいて初めて私も自分の要求を口に出せる。一年の期限を一月でも一日でも縮めるためにはそれしかない。他には考えられなかった。
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