恋のダンスパーティー3
招待状を破り捨てた後、俺はこっそり聖地を抜け出した。
くさくさした時はこれに限る。
数時間後、俺はとある惑星のとある店でやけくそになって踊っていた。
ワルツがなんだ、タンゴがなんだっつーんだ。
パーティーなんか二度とゴメンだ。
俺には脳に刻み込むようなこのリズムの方が合っていた。
踊ってると、急に誰かが俺のわき腹をつついた。
振り返ると、黒髪をおかっぱにしたミニスカートの女がオレの顔を覗き込むようにして笑ってた。
「あんた、カッコイイ!ねっ、一緒に踊らない?」
大音量の中、そいつは俺の耳元に伸び上がってそう言った。
めんどくせぇ。つるんで踊るなんて面倒なだけだった。
「悪りぃ、俺、もうあがるんだ。」
俺はそれを潮時に、スタジオの重いドアをあけて外に出た。
出ると石段のところにタオが座ってた。
タオってのは、最近ここでよく合うやつだった。 音楽の趣味が合って、変わりもので面白いやつなんで、会えばちょっと話もしたりした。
「吸う?」
俺の顔を見るとタオがタバコを1本差し出した。俺は礼を言ってそれを受け取った。
並んでタバコを吹かしているうちに、俺は急に妙なことを思いついた。
「おめー、確か、本業デザイナーだったよな?」
「そうだけど」
「オンナモノ作れるか?」
タオは答えずににやっと笑った。
俺は聞き方を間違ったのを悟った。
こいつは妙なとこでプライドが高いやつだった。
「オンナモノもメンズと同じくらいすげーのかよ」
言い換えるとタオは満足そうに笑って言った。
「もっとすげーよ」
「俺に作ってくれよ」
「いくら?」
「お前事故ってバイクぽしゃったって言ってたろ?新しいやつ作ってやる。ホーリツぎりぎりまで改造したやつ」
「まじで?」
俺の提案はタオのツボにはまったようだった。
「オッケ。作るよ。希望は?どんなやつ?」
「ダンスを踊る服。・・・・オジョウヒンでかっ飛んでるヤツ」
とんでもない大雑把なオーダーだったけど、これもタオのツボにはまったらしかった。
「オジョウヒン・・・いいね。オジョウヒンなやつね。」
くすくす笑いながら、タオの頭の中では、もういくつかアイディアが浮かびはじめているらしかった。
「色は、どうする?」
聞かれて俺は一瞬とまどった。
あいつなら、青か・・・紫か・・・・・
考えるのを通り越して、俺はとっさに答えてた。
――「黒」
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