恋のダンスパーティー5
パーティー当日、俺は朝から心臓がばくばくしてた。
一度 断った手前真っ先に駆けつけるわけにもいかねぇ。
俺はわざとルヴァが誘いに来るのを待って、ひとしきり説得させてから腰をあげた。
行かねーわけがなかった。
あいつがオリヴィエのドレスを選ぶか、俺のドレスを選ぶかどうしても知りたかったし、 もしあいつが俺のドレスを着てくれたら・・・・・俺はその時には、去年あいつに言えなかったことを言うつもりだった。
会場のはじっこに目立たないように陣取ってると、会場の一角がにわかにざわめいて
「はぁ〜い!ちゅうも〜く!お姫様達の入場だよ!」
オリヴィエのテンションの高い声が響いた。
カーテンを揺らして、アンジェリークとロザリアの二人が入ってきた。
・・・・やっぱりな。
オレは意外とすとんとその事実を受け入れた。
そりゃそーだ。 何期待してんだ。
馬鹿だ、オレは。
あいつが黒なんか着るわけねーじゃん。
オレと同じ不良のダチが作った服なんか着るわけねー。
分かってんじゃねーか、そんなこと。
オリヴィエが用意した服はロザリアに良く似合ってた。
ワルツやマズルカにぴったりの、貴婦人の服だった。
だけど、それ着てる限りおめーは貴婦人の仮面を脱がない。
痛くても泣きたくても、きっとおめーは我慢しちまうんだ。
ロザリアは素早く辺りを見回すと、話し掛けてくる連中をやんわりと笑顔で押し留めて、こちらに向かって歩いてきた。
「ゼフェル様・・・・」
ロザリアは立ち止まると俺に声をかけた。
ふんわりとあの扇と同じ香りが漂ってくる。俺は自然に顔を背けた。
「ゼフェル様・・・あの、もしかして・・・・・」
薄紅色のドレスの切れ目から、真っ白なロザリアのうなじが目の前に見えた。
ドレスは本当に忌々しいくらいこいつに似合ってた。
俺の中で何かがぐっとつきあがってきて、 我慢できずに、俺は叫んだ。
「小さくまとまりやがって・・・・一生そうやってろ!」
あたりがいっせいにざわめき出す中、俺は後も見ずに会場を飛び出した。
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