<風のライオン4>-Vivian

残ったのは彼を入れて7人。その人数ですぐに打ち合わせが始まった。
コピーされたチャート図を手に、彼が進行状況を説明して、どんどん担当が決まってゆく。
私は難しい内容のことはさっぱりだったけど、必死でチャート図をめくって、そこに決まった担当と期限を書き込んでいった。
あっと言う間に最初のセクションの担当が決まった。
「資料は後で各自に送る。問題があったらすぐに俺に連絡してくれ。夜中だろうが明け方だろうが構わねー。遠慮なんかしてんじゃねーぞ。仕上げることが肝心なんだ。当面各自のパートの最初のテストには俺が全部立ち会う。10日に全員の修正分を統合した第6セクションの全体テストを行う。・・・・今日のところはまぁ、そんなもんだな!」

このまま解散してしまいそうな勢いに、私は慌てて口をはさんだ。
「待って!」
みんなが一斉に私を振り返った。

私は思わず真っ赤になりながら、それでもこれだけは言わなくっちゃと必死の思いで叫ぶように言った。
「全員のメルアドと携帯の番号、教えてください。私、毎日進捗状況を問い合わせますから、遅れそうな人はその時すぐに言ってください。必要な機材や資料がある人も、私に言って。出来る限り研究院で手配します。それから、しばらくは定期的に全員でミーティングした方がよくないですか?要らなければ途中で止めてもいいから・・・・。無駄がないようにテストの日に一緒にやるようにしませんか?10日に統合テストをするなら、そのテストが終わった後はどうですか?それでよければ私、日が近くなったらまたみんなに連絡します。」

卒倒しそうなくらい、心臓の鼓動が速くなってた。知らない人たちを前に、こんなに積極的になったのって初めてだった。
みんなが呆気に取られたように黙りこくっているのを見て、急に冷や汗が滲んできた。
やっぱり・・・・、何にも分かってないくせに、でしゃばりだったかしら・・・・・?


「よし!みんな、コイツの言うことを聞け!」

ふいに彼が怒鳴った。

「スケジュール管理すんのはビーだからな。つまり、コイツの言うとーりやってさえいりゃ、きっちり予定通りに終わるんだ。」
そういうと彼はくるりと私に向き直った。
「いいか、俺もオメーの言うことを聞く。誰かが聞かなかったら俺に言え、俺が聞かなかったら、オメー自分で俺に文句を言え。絶対、きっちり間に合わせるんだ。オメーにかかってんだからな!」

「頼むぜ、ビー」
最後はまた、笑顔だった。

ヴィヴィアンですってば・・・・。
言いかけたことばを、私は飲み込んだ。

あだ名で呼ばれるのなんか、初めて・・・・・。
何だか恥ずかしいけど、不思議とイヤじゃなかった。
ただでさえ真っ赤になってた頬が、また更に熱くなった。







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