act.4  初めての依頼&初めての笑顔 

Oscar



「・・・・あの・・・・。」
「・・・・なんだ。」
「炎の力を送ってください。その・・・・たくさん。」

俺は堪えきれずに大きく息を吐いた。心底ほっとした。1ヶ月間、この言葉を待っていたのだ。

「分かった。任せてくれ。浴びるほど送っておこう・・・・・アンジェリーク。」
名前で呼んだのはおまけだ。ほんとうはまだ早いのだが、特別だ。

アンジェリークは、顔を上げると、いきなりふわっと笑顔になった。
「はいっ!有難うございます!よろしくお願いします!!」
なんのてらいもない、嬉しさがそのまんま体中からあふれだしたような笑顔だった。余程安心したのか、目じりにはじわっと涙すら浮いている。
それを見たとたん、俺はなぜだか、心臓を『ぐっ』とわしづかみにされたような気分になった。
なんだ、なんなんだ、泣くほど嬉しかったのか・・・・。


「失礼します。」
ぺこりとお辞儀をするとアンジェリークは執務室を出て行った。
俺は一仕事終えた倦怠感と同時に、ちょっとした名残惜しさを味わっていた。
どかっとデスクの前の椅子に腰をおろすと、先ほどのシーンを頭の中で反芻する。
彼女を一瞬ものすごく「可愛い」と思ってしまったのは、結局意外性があったからなのかも知れない。
嫌なやつだと思っていたやつが「意外といいやつだ」と思うと、急に親密度があがったりするではないか、それだ、それに違いない、きっと。

(今日はちょっぴり余計目に力を送っておこう。)
俺はそう決めた。このくらいの贔屓なら、大勢に影響はないだろう。
彼女は明日も来るだろうか?きっと来るだろう。1週間続けてきてもおかしくないくらい力が不足しているんだから・・・。
力が充分補充されれば、彼女も少しは休めるようになるだろう。無理する必要はない。まだ試験は始まったばかりなのだから。

「・・・・明日も必ず来いよ。」

俺は珍しく独り言を言った。。





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