act.7 失恋、確定 Oscar 翌日朝一番でリモージュから届いた招待状を見て、俺はのけぞった。 候補生の二人を招けと言ったのに、俺まで招いてどうする? 俺に招待状が来たということは、なんだ?守護聖全員招いたってことか? それであいつら全員の前でいちゃついてキスして見せるつもりなのか? 昨日のリモージュの取り乱しようを見た時に、もっときちんと説明するべきだった。俺は真剣に後悔した。 リモージュはしっかりしているようだが、ルヴァのこととなると、けっこうカンタンに頭の箍が外れてしまうのだ。 当日、俺は行くのが恐ろしい気がしながらも、結局ルヴァの私邸に向かった。 言い出しっぺとしての責任を感じたし、数時間後には失恋が確定しているアンジェリークのことも気がかりだった。 到着してみると、案の定、守護聖全員がずらりと顔を揃えていた。 私的なお茶会なんか断って行かなくても構わないのだが、下手にルヴァが日頃から面倒見が良くて人望があるのと、下手にリモージュがノリが良くて世話好きでやたら人気があるものだから、こんなことになってしまうのだ。 (何やってんだ、リモージュは!)俺は心の中でため息をついた。 候補生の二人もやってきている。 その日のアンジェリークの姿を見て、俺はまたしても暗澹たる気持になった。 彼女は無茶苦茶気合を入れてめかしこんでいた。 田舎くさいリボンの替わりにローズピンクのカチューシャをして、ローズピンクのワンピースを着込んだ彼女は普段とは段違いに光って見えた。そう、認めたくはないが、俺はとうに気づいていた。彼女は手が早くて気が強すぎるところがあるが、黙っていれば容姿は非常に楚々としていて、可愛い。普段のあの制服がダサすぎるのだ。俺がちょっと手をかけて磨いてやれば、あっという間にものすごいいい女になるに違いないのだ。 それにしても、あんなにはりきっているところを見ると、やはり何か心に期するところがあるのだろう。 だめだ、だめだ、やっぱり俺の言い方がまずかった。ちゃんとリモージュに念を押しておけばよかった。こんな大勢の前で盛大に失恋させなくっても、もっと密やかに、こじんまりとやってくれればそれでよかったのに・・・・。 そこに、少し遅れて登場したリモージュを見て、俺はまたのけぞった。 何を考えてるのか、リモージュもまたアンジェリークに負けないくらい気合を入れてめかしこんでいた。 (候補生相手にライバル意識を燃やしてどうするんだ!) もう、頭をかかえたいような状況だった。 ルヴァだけが普段どおりに、地味ななりで、あちこちのテーブルでへこへこと茶を注いで回っていた。 何時の間にか俺の横に立ったリモージュが、爪が食い込むくらい俺の腕を握り締めていた。 「ああっ、ルヴァがアンジェリークにお茶ついでる!」 「あっ、いま、ルヴァがアンジェリークに笑った!」 「きゃっ、触ったっ。ねえ、アンジェリークがルヴァに触っちゃった。どうしよう〜。ねえ、オスカー様〜!」 普段はトラブルに強いはずのリモージュは、このときばかりはすでに半狂乱の状態になっていた。 「いいから、早くいけっ、二人は結婚してるって、ぶちかましてやれっ!」 「・・・分かりました。」 リモージュはきっと顔をあげるとルヴァめがけてまっしぐらに走っていった。 |