act.8 衝撃のディープ・キッス  

Limoges



ダメ。考えられない。ルヴァが私以外の女性と付き合うなんて。
考えただけで卒倒して絶息しそうだった。そんなこと、とても耐えられない。
だけど、私どうしたらいいんだろう。あの人になんて言えばいいの?

ルヴァが私を見かけてにこっと微笑みかけてきた。
私は覚悟を決めた。
ゆっくりとあの人の前に歩み寄る。

「ねえ、ルヴァ」
「はい、なんですかー?」
「私のこと、愛してるでしょう?」
「・・・・どうしたんですか、藪からぼうに・・・?」
「好きならキスして!」
「はああ?」
「ねええ、好きなんでしょう、私のこと?だったら、できるでしょう??」
「ここで、ですか?」
「そう!ここで!今!すぐ!」

「・・・・・・・・・・。」

ルヴァが首を傾げたまま、深いブルーグレーの目で、じいっと私のことを見た。




一瞬、私の体が大きく傾いだ。
ルヴァが力任せに斜めに私を抱き寄せたのだ。
あっという間にルヴァの顔が私の上に覆い被さってきて、唇が、触れた。
ルヴァの手が私の髪に触れ、続けざまに舌が差し込まれた。
深く口の中をまさぐられて、私は全身が痺れて足ががくがくしてきた。
だけど倒れることもできない。ルヴァが私の腰を支える手はびくともしなかった。
ルヴァはゆっくりと唇と舌の愛撫を続け、私が陶酔と呼吸困難で卒倒寸前になったところで、やっと私を放した。
ルヴァはどたっと倒れそうになる私の腰に手を回して素早く支えると、実にさりげなく、今度は私の横に立った。



―――当然ながら、その場にいる全員が硬直していた。



シーンと静まり返った、その中で、ルヴァがにっこり笑って言った。


「あー。すみませんねー。この人があんまり可愛いんで、我慢できなくなっちゃいましたー。みなさんはどうぞお気になさらずにー。」


―――今度は全員がのけぞり、あちこちで椅子の引っくり返る音がした。


さっと私を振り返ると、ルヴァはちょっと心配そうな顔になって私に小声で言った。
「良く分かりませんけど、これで良かったんですか?」
私は相変わらず腰が抜けそうになったまま、なんとかこれだけ言った。
「はっ・・・はい。ご協力、ありがとうございます。」






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