時計仕掛けのI Love You5

Angelique



新しい宇宙での生活が始まった。


毎日が試行錯誤の連続で不安でいっぱいだけど、やってみると自信喪失しているヒマなんかなかった。
悩むヒマも迷う余裕もない。 宇宙は刻々と育ち、私達の力を貪欲に求めている。
私とレイチェルは必死で宇宙の育成に当たり、一つ、又一つと宇宙に命が満ちてゆくのを、夢中になって見守っていた。


それでもやっぱり私は、行き詰まる度に、オリヴィエ様のことを思い出してしまう。

「私、オリヴィエ様が羨ましいです。」
以前、私がそう言ったら、オリヴィエ様はびっくりしたような顔をされた。
「どうして?」
「だって、オリヴィエ様はいつも考え方がはっきりしていて、筋が通ってるし・・・・。私、いつもぐずぐず仕方ないことで悩んでばかりで・・・・・」
それを聞いた瞬間。オリヴィエ様は、おかしそうに吹きだしてしまわれた。
「馬鹿だねぇ、私だって悩みぐらいあるさ。」
それからオリヴィエ様はとても優しい笑顔になって、私に向かってこう言った。
「悩むことは恥ずかしいことじゃないよ。ちゃんと悩まないで後で後悔する方が情けないんじゃない?」


オリヴィエ様が私にかけた魔法はまだ消えていない。
あれから私は落ち込むことが前ほど怖くなくなった。
オリヴィエ様が私にくれた力。前を向いて明日を信じること。
すっかり遠くに離れてしまった今でも、それはまだ私の中にちゃんと残ってる。
毎日会っているのと同じくらい、私を動かしている。


一生懸命がんばって、宇宙を愛して、いつかこの宇宙を生命で満ちたすばらしい世界に育てることができたら、オリヴィエ様はきっと喜んでくれると思う。
「よくやったね」って、笑ってくれるに違いない。



窓を開けて遠くの星に思いを馳せていると、いきなり慌しいノックの音が聞こえた。
ドアが開くなり飛び込んで来たのはレイチェルだった。

「どうしたの?レイチェル?」
いつもは物に動じないレイチェルが、青ざめて険しい表情をしている。
レイチェルは固い口調で私に告げた。

「すぐに研究院に来て!」



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