時計仕掛けのI Love You6

Olivie



緊急の呼び出しを受けて聖殿に駆けつけると、そこには同僚達の姿はなかった。どうやら呼び出しを受けたのは、私ひとりらしい。

金の髪の女王陛下は、ロザリアから手渡された資料を私に示しながら、新宇宙で起きている大規模な崩壊現象について、手際よく説明した。

「病原菌か、エネルギー関係の問題か、はっきりしたことはまだ何も分からないの。ただ、生まれたばかりの惑星から次々に生命反応が消えていっているのよ。」

金の髪の女王陛下は眉をひそめてそう言うと、おもむろに私のほうに向き直った。

「あなたを呼んだのは他でもないの。あなたに新宇宙に行って欲しいの。お願い、オリヴィエ。あの子を助けてあげて。」
「陛下・・・。」
「調査結果が出るのを待っていたら新宇宙に育ち始めた生命は全滅してしまうかもしれないわ。すぐに手を打たないと。」

私は答えをためらっていた。
もちろん女王陛下の命令に逆らうことはできない。だけど、やっと独り立ちしたあの子に今ここで私が救いの手を差し伸べることが果たしていいことなんだろうか?それに、崩壊の原因が物理的なものなのだとしたら、私の夢の力がそれに対して有効だとは思えなかった。

「あなたの力でなきゃダメなの」
私の思いを見透かすように陛下が言った。
玉座のステップを勢い良く飛び降りると、陛下は小走りに私の目の前に走ってきて、にっこり笑うと私の両手を取った。

「ねぇ、昔、私がまだ女王候補だった頃、オリヴィエ私に話してくれたわよね?文無しで、お腹すかせてて、なぁんにも持ってなくても、夢だけは誰でも持ってていいんだって。それでみんな頑張れる、そこから何もかも始まるんだって。
今あの子の宇宙は苦しんで、何もかもを失おうとしている。今必要なのは、あそこに生きる命が、明日を信じて自分で立ち上がるための力だと思うの。」

「・・・分かりました。」
私は曖昧に答えた。正直言って、そんな単純な問題かどうか分からないという気はする。だけど陛下には確かな信念があるようだった。

まだ完全には割り切れていない私に向かって、陛下はもう一度小首を傾げてにこりと笑った。
「いいじゃない。あの子のこと、好きなら好きで。」
「えっ?」
「あの子なら大丈夫。あなたもたまには自分に素直になってもいいんじゃない?・・・・だめ?」

当惑している私をよそに、陛下は再び真顔になった。
「もしどうにも手がつけられないようだったら、仕方がありません。新宇宙はあきらめるしかないわ。あの子達を連れて何とかこちらに脱出してきて頂戴。」


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