4.〜蝶〜

どこから迷いかんだものか、
日溜まり色の蝶がヒラヒラと
視界を掠めるように飛んで来た。
そして、何を思ったんだろうか、
ロザリアの手の甲に華奢な6本の肢を下ろすと
休めるようにゆっくりと羽根を瞬かせる。
物怖じしないその様子が初めて出会った頃の金の髪の天使と重なって・・・ロザリアは目を細め、
次いで、いつのまにやら・・花嫁の父に近い心地に なっていたことに気が付いて今度は微苦笑を洩らした。
手の甲に止まったままの蝶を驚かさぬように慎重に窓を開けると穏かなそよ風が頬をやんわりと撫でつける。
「全く・・このわたくしの手を煩わせるなんて・・しょうの無い子ね。」
きつめの言葉を投げ掛ける。
穏かな微笑を浮べ、
言葉とは全く逆の裏切る口調で。
外へ向って差し出すように・・
開けた窓からそっと腕を伸ばす。
「さ、お行きなさいな。」
言葉に押されるたのか、その羽根に風を感じたのか・・思い出したように蝶は、ロザリアの手を離れ、うららかな陽射しの庭園へと舞い上がると、
何事も無かったように飛んで行った。
じっとそのまま・・眼を凝らす・・
その姿が花々の間に紛れてしまうまで。
ロザリアの胸の中にディアの詞がよみがえる・・
―――宇宙と陛下をよろしくね。
彼女が、愛し・・護り・・慈しんだ宇宙を、
これからは、わたくしがあたためるの・・彼女ごと
それが、わたくしの望み。
「幸せになるのよ・・」
見守っているわ。
いつも・・いつまでも・・
【紅玉猫様の素敵な挿絵へGO!】

■ロンアルより〜
またまたいただいてしまいました。
まちこです。さまの優しいストーリー、お楽しみいただけたでしょうか?
同じ一人の人間を、ひとりは恋人として、ひとりは友人として愛することで盟約を結ぶ。
形は違うけれど、愛の深さは同じ・・・。
アンジェを思う二人の気持ちがとても優しくて、 ・・・優しさに溢れたお話に、胸が熱くなりました。
まちこです。さま、いつもステキなお話を有り難うございます。
この物語に紅玉猫さまがステキなイラストをつけてくださいました。
”独り言”から生まれた、もうひとつの世界をどうぞお楽しみください。
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