<双真珠4>


一心に祈りを捧げていたのはどれほどの時間だったのか・・

わたくしが人の気配に振り向いたのと、
彼女がわたくしの名を呟いたのは、同時で・・

候補時代よりも幾分伸びた髪には、
見慣れた赤いリボンは無く・・、
代わりにに甘い花の香りを纏っていました。
薄紫色の衣装に包まれている彼女は、
制服姿しか良く知らぬわたくしの目に
艶やかに咲く花にも似た美しさを映しました。



「・・お逢いしたかった・・」

わたくしが今まさに言おうとした言葉を、
貴女が、掛けて下さった瞬間、
もう、わたくしは貴女を抱き締める為に腕を伸ばすのを躊躇いませんでした。


ずっと胸に巣食わせていた、
わたくしの想いを貴女に告げ・・
貴女の心にもわたくしが住んでいると知った時・・

行き場をなくし、堰き止められていた激情が
貴女へと迸るのをわたくしは、
もう・・押し留めなかった。



・・その事が、
終わりの始まりである事に気付きもしないで







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【玄関へ】