<双真珠6>
宇宙を愛すべき女王が、唯一人の存在にその心を傾けた時、徐々に、だが確実にサクリアは歪みだしていた。
宇宙を総べるべき女王の恋・・。
その禁忌のあらましも、
それが引き寄せる行く末も
彼女は、前女王より聞き及んで知っていた。
それは、引継ぎにあたっての最大の忌避すべき事象だったから・・
アンジェリークは、リュミエールを愛していた。
例え、打ち明ける事もなく、恋は叶わなくとも、
同じ聖地で、同じ宇宙を護れればそれでいい。
そんなふうな関係のままどちらかの力が尽きるまで永い時を渡っていくのだろうと諦めにも似た穏やかさでそっと、彼を心の中に住まわせていた。
それでも、あの湖で胸に秘めた恋が成就していたと知った瞬間、彼女もまた自分の心を偽る事が出来なくなった。
蜻蛉の様な儚い恋にその身を委ねる事を躊躇わずに選び取ってしまったのだ。
けれど・・
宇宙もまた、慈しまずには居れなかった彼女は、その歪みをも見過ごせなかった。
だから、女王の後継者を捜し、矯正の為に使うものが、自分の生命の輝きしかないと知っていても・・迷わずに使った。
誰にも知られぬようにひっそりと。
教えられていた禁忌の筋書き通りに自分の体が侵され始めている事を彼女は、露ほども疑わなかった。
それでも・・輝きを使わずには居られない。
次代の女王が目覚めるまでは・・
内側から少しずつ食い荒らされていく蟲のように・・何者からも護られるべき高貴な筈の身は、蝕まれていった。
誰にも気取られぬようにひっそりと。
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