〜Blue Blue Eyes〜

8.Tea Time
「えー!そうなの?」「えぇ、わたくしの聞いた所によると・・」
「そうそう。それでいいのよ〜」「もう!オリヴィエ様ったら〜。」
「ゼフェル、ランディ。もうその辺にして・・・お茶のお代わりでもいかがですか?」「あ、リュミエール様、俺、手伝いますよ!」「ちっ。」

平日の午後、育成の合間にたびたび宮殿では、お茶会が開かれる。つい、先ほどから始まった今日のお茶会のメンバーは2人の女王候補と、風・水・鋼・緑・夢の守護聖の計7人。

「どうぞ。」
先ほどと違って香りのいい紅茶が目の前に置かれる。
「う〜ん、いい香り!さすがリュミちゃんのハーブティだね。おいし〜☆」
綺麗に整えられた眉をちょっと上げ、ぱちっと綺麗なウインクを返すのは夢の守護聖、オリヴィエ。
「ほんとだ。これリュミエール様の育てたハーブですか?いいなぁ。今度僕のハーブのハーブティにしてくださいね。」
えぇと微笑むリュミエールに満面の笑顔でおいしそうに紅茶を飲むのは緑の守護聖、マルセル。
「ち。お茶なんて飲んだら同じだろ。変なもん入ってるぐらいなら水の方がましだぜ。」
といいつつ、出されたカップの半分近くが飲み干されているのは鋼の守護聖、ゼフェル。
「おい、ゼフェル!そんな言い方ないだろう?俺は好きだな。自分で淹れるのと全然違って凄くおいしいです。」
ごくごくっとカップのお茶を飲み、もう1杯いいですか?とカップを差し出すのは風の守護聖、ランディ。
「ゼフェルだって、おいしいと思ってるからきちんと飲むんだろ?もっと素直になった方がいいぞ」
「うるせー。ランディ野郎は黙ってろ!。」
「もう!2人ともいい加減にしてよ!せっかくみんなで楽しくしてるんだから。素直じゃないのは2人ともだよ!」
いつも通りのやりとりを笑って見ている2人の女王候補。
緩やかな、穏やかな時間が流れていった。







「このカップきれい〜。ねぇロザリア!」
「そうね。本当に綺麗なカップですわ。」
「ありがとうございます、アンジェ、ロザリア。」
薄いブルーに小さな花の浮き彫りが日の光でわずかに陰影をつける。
「そうそう、カップといえば、ねぇランディ・・」
「ん?カップ?本当に綺麗だよこのカップ。俺の家にあるのはでっかいマグカップくらいだもんなぁ。」
「もう、そうじゃなくて。」
「無駄だぜ、マルセル。その能天気野郎にはわかってねーよ。」
「何だよゼフェル!何のことだよ!」
「どうせあれだろ。最近ルヴァの野郎が同じ湯のみいっつも使ってるってやつだろ。」
「そうそう。ここ2週間ぐらいだよね。熱いお茶のときも冷たいときも必ずあの緑の湯のみなんだ。前はルヴァ様結構本とか読んでてそのまま色んな所に湯のみとかコップとか置いてあったのに今は絶対置き忘れてる事無いんだよね。」
「へぇ。俺全然気づかなかったよ。」
「だからお前は能天気野郎なんだよ。」
「何だよ、ゼフェル、あ、でもそう言えばオスカー様も・・・。」
「あぁ?オスカー野郎がどうしたって?」
「最近2週間ぐらいかな、俺毎朝剣の稽古してもらってるだろ?そのとき使ってる剣の鍔にさあ凄いかっこいい飾りつけてるんだ。凄い大切にしてるみたいで、終わった後必ず傷とか付かなかったか点検してるんだよなぁ。」

3人の話を聞いていた2人の女王候補は視線を合わせて少し頬を染め、うつむき加減に残りの紅茶を飲み干した。
その様子に、察しのついた守護聖が2人。・・・正確に言うと何かを感じ取った勘の鋭い守護聖をいれて3人だが
「ねぇ、アンジェ。これってどう言う事だと思う?」
マルセルが綺麗な菫色の瞳が真っ直ぐにアンジェリークに届く。
「え?」
一瞬、自分の思考にはまっていた彼女は急に振られた質問に言葉が詰まってしまう。
「それはね〜マルちゃん。大切なプ・レ・ゼ・ン・トだよ。ルヴァもオスカーもね。」
「えええ!そんな大事なものなら、何で毎日使うのかなぁ、壊れたり掛けたりしたら大変なのに。」
「そうだよな。オスカー様だって剣につけてたら、ぶつかって壊れることだってあるのに。」
なんだか納得いってないような2人を横目にオリヴィエは2人の女王候補に軽くウインクを投げる。
「そうですね。マルセル、貴方のつけているペンダントは確かお姉さんから頂いたプレゼントですよね?」
オリヴィエの様子を見たリュミエールがマルセルに答える。
「えぇ。聖地に来るときにもらったんです。これを付けてるとなんだか一緒に居られるような気がして・・・。あ・・」
「そう。きっとルヴァ様もオスカーも同じ気持ちなのでしょう。だから大切なプレゼントを自分の近くに置いているのでしょうね。」
「そっか、オスカー様がいつも点検してるのもそのためなんですね!」
「じゃあ、そのプレゼントってだれからもらったものなんだろ?」
1つの疑問が消えて新たな疑問が持ちあがったそのとき、
「そんなんどうだっていいだろ。ルヴァとオスカーが大切なもの持ってんのがそんなに不思議か?お前らだって1つや2つ大事なもんもってんだろ?それについていちいち聞かれたら気分悪いだろ」
黙って紅茶を飲んでいたゼフェルがポツリとつぶやく。その一言にマルセルもランディもふっと言葉をとぎる。
「私が、どうかしたんですか〜?」
後ろから急に声を掛けられたゼフェルがびっくりする。
「なんだよ、おっさん!いつからそこに居やがったんだ。」
「おっさん・・・・。ゼフェル、あなたはまったく・・・。」
はぁと息をつくルヴァにリュミエールが静かに紅茶を差し出す。
「ルヴァ様もいかがですか?」
「俺にも入れてくれ。」
「オスカー・・。背後から声を掛けないでください。」
やれやれといった感じでもう1つカップを差し出すリュミエール。言葉とは裏腹のその行動はオスカーがいたのを知っていた様子だ。
「聖地はどうでしたか?」
女王候補に聞こえないように、カップを渡しながらリュミエールが問う。
「ここにいる時間が長いからか・・・。それとも。」
差し出されたカップにゆっくりと口を付けて、いつもと違い言葉を選んで話す様子にリュミエールはそれ以上問いかけることをやめ、皆の会話へと入っていった。

薄いブルーのカップによく映えるロイヤルブルーの髪。
風のいたずらで時々そよぐその髪を見つめて、穏やかなお茶会の雰囲気を感じて・・・。
つい先ほど戻ったばかりの聖地が、とても異質に見え始める。
・・・もう、残された時間は少ないんだろうな・・。

 

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・・これ、真実の絆と被ってます
(後半、ルヴァ視点がオスカー視点に変わるだけ・・・)
時間の経過が解らなくなってきたので・・ちょっと重ねて見ました。 


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