〜真実の絆〜

エピローグ
窓の向こうは闇一色・・・。時折通り過ぎる光は、すれ違うシャトルのものか、それとも力尽き流れゆく惑星の最後の命の灯火か・・。
新女王が決定してから、まだ1週間ほどしかたっていない。
旧宇宙から新宇宙へ、移管は万事滞りなく行われたが1つだけ、予想外の出来事が起こった。
「ルヴァ。シャトルの中で灯りもろくにつけずに報告書なんて読んで大丈夫なのか?」
扉が開いて急に明るくなった室内でひときわ際だつ赤の髪。
「あ〜、オスカー、すいませんね〜。」
少し呆れを含んだかのようなその声にいつもと同じ穏やかな微笑が答える。
「ふふ。私の性分なんでしょうかねぇ。こう、新しい物があると熱中してしまって・・・。」
ぽりぽりと頭をかきながら、少し照れたように肩をすくめ、すっと窓の方へ視線をずらす深いグリーンの瞳。
視線を宇宙空間へとばしてしまったルヴァの襟元、小さいがひときわ輝く石が1つ。そう新女王が普段身につけているピアスと同じ物。それに気づいたオスカーは、すっと扉を閉め扉の向こうでため息を1つ。
「やっぱり、俺には出来そうにないな・・あの2人のようには・・・。ふっ・・強さを司る炎の守護聖か・・本当に強いのはあの2人のほうだ。」

新しく移った宇宙に生体反応があると、最初に気づいたのは新女王アンジェリーク。それも移管の途中に。それでも女王はやってのけた。旧宇宙の全ての星をこちらへ移し、そしてそこに存在していた惑星には全くの影響を与えなかった。
もともと、女王の管理下に無かった惑星。その惑星に関与していいのかどうなのか、結論は未だでていない。
ただ、こうして女王の管理する宇宙の一端に入ってしまった惑星を捨て置けるわけでもなく、そのデーターをとり、サクリアのバランスや文明状況を判断し終わったのが昨日の朝のこと。
その星は、異常なまでに炎のサクリアと地のサクリアを望んでいた。
『それなら、その惑星を直接見に行って、状況を判断した方が適切だわ。』
そう言い切った新女王の命により、炎の守護聖オスカーと地の守護聖ルヴァは今こうしてシャトルに乗っている。
あくまでも、今回はその惑星のある宇宙系の外からの観察、ということになるが・・。
「ねぇ、アンジェリーク。貴女には今聞こえているでしょう?宇宙の喜びの声が、私にはその声を聞くことは出来ないけれど、こうやって宇宙空間を渡っていると感じることが出来ますよ・・・宇宙の歓喜の声を・・。」
再び報告書に目を落とす、ここ1週間ほどで集められたデータには詳細な情報は載っていない。その惑星へ行くことは出来ないのだから。
新しく見つかった惑星。・・・・その惑星の言葉を借りるならそこは

銀河系、第3惑星 Earth という。
 

-Fin-

 


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